(番組ガイド誌「GSTV FAN」 2018年12月号掲載)
イーダーオーバーシュタインの宝石彫刻 第2章 -12-
─INTERGEM─インタージェム
今回は、ドイツ、イーダー・オーバーシュタインで毎年開催されているジュエリーショーINTERGEM(インタージェム)訪問記をご紹介いたします。
宝石の街 イーダー・オーバーシュタインとは
▲ 秋の訪れを感じさせるイーダー・オーバーシュタイン
こちらのコーナーをご愛読いただいています皆様にはすでによくご存じの方も多いかとは思いますが、「イーダー」と呼ばれている宝石の街について、改めてご説明いたします。
イーダー・オーバーシュタインは、ドイツの中心都市のひとつフランクフルトから南西に約130キロにある、人口は3万人弱の緑豊かな小さな街です。ドイツ語で「石の上の町」を意味し、ナーエ川の谷あいに位置しています。フランクフルトからは車、電車ともに1時間半ほどの距離にありますが、イーダー・オーバーシュタインに近づくにつれて、なだらかな丘陵からごつごつとした岩肌に車窓が変わっていくことが印象的です。15世紀半ばにメノウ鉱山が発見されたことから宝石研磨技術が発展し、以降宝石産業の集積地として発展してきました。1870年に採掘が中止されてからも世界中から原石が集まる宝石の街として知られ、現在でも住民の70%が何らかの形で宝石産業に関わっていると言われています。のどかで静かな街ですが、老舗の宝石業者がひしめき、著名な宝石彫刻家が世界に向けて作品を発信し続けるユニークな街です。
彫刻家や宝石商との再会の場所、年に一度のジュエリーショー「INTERGEM」
▲ コンスタンティン・ヴィルド社の
輝く宝石
そのイーダー・オーバーシュタインの展示会場で毎年1回開催されているINTERGEM(インタージェム)は、今回で34回目を迎えるバイヤー向けジュエリーショーです。「The World’s Finest Colours」のテーマのもと、今年は9月27日から9月30日までの4日間開催され約120社が出展しました。世界規模のジュエリーショーである香港フェアやバーセルフェアと比較すると確かに小ぢんまりとしていますが、「世界最上級のカラー」というテーマの言葉通り、高品質なルースや、宝石彫刻家による創造性豊かな作品が多数展示されているのが特徴です。まず会場に足を踏み入れると、イーダーの老舗の石屋であるConstantin Wild(コンスタンティン・ヴィルド社)の輝く宝石が迎えてくれました。コンスタンティン・ヴィルド社の社内ギャラリー、そしてジュエリーショーのブースはいつも非常にこだわりをもって展示されており、今回はモノクロで描かれた家屋の大きな写真が飾られていました。この街の宝石との長い歩みと、のどかな雰囲気が伝わってきます。
▲ クリスタルカービングを身に着け
るアンドレア・ゾーネ氏
2年前に訪れた第32回インタージェム(2016年11月号ガイド誌掲載)と比較して印象深かったのは、若手作家による新しい作品が目立っていたことです。GSTVでもおなじみのAndrea Sohne(アンドレア・ゾーネ)さんにもお会いできました。彼女が近年手掛けている立体カービングのペンダントやリングは、どこか新しくそしてユニークです。ついつい私が新しい彫刻されたクリスタルに見入っていると、こうやってつけるのよと言って見せてくれました。
また、あの有名な巨匠エルヴィン・パウリーさんのお孫さんにもお会いすることができました。最近は大きな立体彫刻を手掛けており、詳細はお話しできませんが現在手掛けているプロジェクトについて説明を受けました。ヨーロッパでは日本以上に、オブジェや置物といった芸術品への理解が深く、ファンも多いとのこと、クライアントの好みを的確にとらえつつ、自らの独創性を反映させた作品作りをしているように感じられました。いつの日か日本の皆様にもご紹介できればという想いを強めた瞬間でした。
▲ パウリー氏のお孫さん(左)と筆者
▲ ディーター・ロート氏の息子アンドレ
アス・ロート氏のブース。
▲ アメリカ市場で大人気の恐竜モチーフ
カメオ。
私は、各工房を訪問するのとはまた違った発見があるため、数年に一度はこの展示会を訪れるようにしています。今回も若いアーティスト達が新しい作品を力強く発信していることを改めて感じ、イーダー・オーバーシュタインの持つ魅力を再発見することができました。私自身もGSTVのコメンテーターとして、皆様にイーダー・オーバーシュタインの素晴らしい宝石文化を少しでも多くお伝えしたいと気持ちを新たにさせられた旅となりました。