アヒマディ博士のジュエリー講座【特別講座】
ルビーの赤色を表現する新しい代名詞「スカーレット・レッド」と「クリムゾン・レッド」

 ルビーはパープリッシュ・レッドからオレンジー・レッドの色をしたコランダムの変種で、その他の色のコランダムはサファイアと呼ばれます。この赤色は、不純物であるクロム元素が結晶構造に入ることによるもので、クロムの含有量が増えるにつれ、濃い赤色から黒っぽい赤色に変化します。ルビーの色を表現した初代代名詞、「ピジョン・ブラッド(鳩の血)」と呼ばれる高彩度-低明度を示すビビット・レッド(Vivid red)は、自然界が作り出す非常に希で最高の純粋な赤色で、バランスの取れたクロムの含有量と低濃度の鉄がこの色を形成します。ミャンマーはこの「ピジョン・ブラッド」ルビーの名産地で、世界最高品質のルビーを産出しています。その他、同じ大理石起源とするベトナムや中央アジアのタジキスタンからも希に採掘されます。


モントプエズ鉱山から産出されたルビー

▲モザンビークのモントプエズ鉱山から
産出された高彩度のルビー

 近年、タンザニアのウィンザー鉱山とモザンビークのモンテプエズ鉱山から上質のルビーが発見され、21世紀において世界に誇る最大規模の露天掘り鉱山がモンテプエズ地域に誕生しました。ミャンマー産ルビーと比べ、青みがかった紫赤色とオレンジを帯びた赤色のルビーですが、非加熱無処理の美しい宝石品質のルビーが多く産出されています。2009 年に発見以来、モンテプエズ鉱山は国際市場に非常に安定した量と一定の価格でルビーを提供し、シェアを広めています。

 当初はアフリカで産出されてきたルビー独特の黒色味があり、透明度が低く濁った赤色が一般的でした。その伝統を破り、「ピジョン・ブラット」と同等レベルの高彩度のビビット・レッドのルビーがウィンザー鉱山とモンテプエズ鉱山からも採掘され、業界から高く評価されています。

 このような透明度と彩度の高い、美しい赤が凝縮されているアフリカ産ルビーを「ピジョン・ブラッド」と同様な表現で表そうという動きが市場にありましたが、大理石起源のルビーと違って広域変成岩である角閃石岩から産出されたタンザニア産とモザンビーク産ルビーには高含有量の鉄が含まれているため、紫外線下ではミャンマー産ルビーより弱い赤い蛍光を発し、色はやや暗めに見えるという理由から、「ピジョン・ブラット」という表現は適切ではないと国際宝石鑑別機関が判断し、以下のような色の表現を提案しています。

1:炎のような明るい赤色の色相で
わずかにオレンジまたは黄色を帯びた赤色を
「スカーレット・レッド(Scarlet red)」

スカーレット・レッド

スカーレット・レッド(Scarlet red)を呈するルビー

2:青みがかった濃く明るい赤色の色相で
彩度の高いルビーを
「クリムゾン・レッド(Crimson red)」

クリムゾン・レッド

クリムゾン・レッド(Crimson red)を呈するルビー

ルビーの色の彩度と明度のスケール

 現時点では、アフリカ産ルビーに「スカーレット・レッド」と「クリムゾン・レッド」に相当するものは大変少なく、非常に貴重です。特に「スカーレット・レッド」ルビーの数はごくわずかで、希少中の希少とも言えます。

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