【私の宝石物語】タレント 荒木由美子さん≪後編≫

 各界で活躍する有名人の方々が、宝石への想いを紡ぎ出す「私の宝石物語」。
今回は、タレント・荒木由美子さんの後編をお届けします。
歌手・湯原昌幸さんの妻として夫を支え、50代を迎えて今なお、アイドル時代にも負けない輝きを放ち続ける荒木さん。その笑顔の裏には、忘れられないジュエリーの想い出がありました。

荒木由美子さん

 前号では、大事にしていた宝石を泥棒に盗まれるという、悲しい体験談を紹介してくれた荒木さん。あまりのショックに体重が3キロも落ち、しばらくは立ち直れなかったそうですが、その哀しみを癒してくれたのもまた、美しい宝石だったといいます。

 前号でご紹介した、ご主人・湯原さんからのダイヤモンドリングのプレゼント。まばゆいダイヤの煌めきに、ショックも少し和らいだそうですが、実はもう一人、落ち込む荒木さんを見かねて、励ましてくれる方がいたのです。

「息子が幼稚園の時からの『ママ友』で、20年来の友人の『彩子(さいこ)』さん。癌を患って去年亡くなってしまったんですけど、その彼女が、こう励ましてくれたんです。『由美子さん、何くよくよしてるの! 由美子さんみたいな性格の人は、前へ前へって未来に向かって生きてるでしょ?想い出なんてもういいの! だってその宝石は由美子さんのこと、充分幸せにしてくれたんでしょ? だったらもう忘れて前を向かないと!』 そう言われてようやく、前を向ことが出来たような気がします。」

 そんな友から、大切な宝石も贈られました。それは一昨年の3月5日。奇しくもその日は、ご主人・湯原さんの誕生日でしたが、彩子さんが突然、指輪をプレゼントしてくれたそうです。

「彼女のご主人は、彼女が亡くなる数年前に先立たれたんですが、生前は宝石デザイナーをされていて、大切にとっておいたターコイズの指輪があったんですね。それを持ってきて、『コレして!』って私にくれたんです。何でもそのターコイズは、誰も似合う人がいないということで、ご主人の生前からずっとしまわれていたそうで、その日たまたまブルーの服を着ていた私を見て、『由美子さんしかいない!』となって。12 ~ 17世紀のアンティークだそうです。『この指輪が絶対守ってくれるから!パパ(ご主人)も私(彩子さん)も守るから! どんなことがあっても守るからね!』という言葉と共にいただいたので、今もお守りのようにして、いつも持ち歩いています。」

▲亡き友から贈られたターコイズの指輪

 亡き友から贈られたターコイズの指輪には、「守ってくれる」だけでなく、別のチカラもあるようです。ご主人・湯原昌幸さんと結婚し、芸能界を引退。妻として母として家庭を守ってきた荒木さんが、2004年に芸能活動を再開するかどうか悩んだ時、後押ししてくれたのも彼女だったそうで、いつも勇気をくれた友の想いを、ターコイズから感じているといいます。

「今でも何か迷った時には、ターコイズの指輪を触って、チカラをもらっています。真っ青な石に触れると不思議と、「よし頑張ろう!」という気持ちが湧いてくるんですよね。彼女が亡くなってから、ちょうど一年。今回、宝石の取材を受けるのも初めてで、勿論この指輪を人様にお見せしたこともなかったんですが、それが一周忌のこのタイミングっていうのも、不思議なご縁だなぁと思ってます。」

▲アイドルだった十代の頃に買った
ジュエリーケース。40年前のものですが
愛おしくて、今でも大切に使っている宝物

 亡き「心友」との絆の証しともいえる宝石が、荒木さんの日々の暮らしのチカラとなり、さらには輝きを与えてくれているのかもしれません。
そんな荒木さんにとって、毎日欠かせないジュエリーがあるそうです。それはー。

「イヤリング! 朝お化粧したら、必ずイヤリングも着けるんです。お化粧とイヤリングはワンセットで、出かける予定がなくても必ずしますね。」

 えっ? 一日中お宅にいる時もですか?

「もちろん! お化粧をしなかった日は、結婚以来一度もないです。主人がゴルフで4時半とか5時半とかどんなに早くても、ちゃんとお化粧して『行ってらっしゃい!』と送り出しますから(笑)。主人からお化粧して欲しいと言われた訳ではないですけど、主人は仕事場に行ったら、綺麗な芸能人の人達がいっぱいいるでしょ。でも家に帰ったら、うちのカミさん、こんなになっちゃって…なんて思わせたくないし、引退したらこんなに変わっちゃったよと、世間の皆様から思われるのも、湯原さんのためにも絶対にイヤで。これはもうプライドですかね。お化粧してイヤリングして『行ってらっしゃい』が、私の一日の始まり。自分自身の決まりですね。」

 結婚して33年。妻として輝き続けるために、努力を怠らない荒木さんですが、そこにはこんな弊害(?)も。

「家の中でスッピンで過ごすという概念がないから、風邪を引いても熱があっても、お化粧をする訳ですけど、チークで元気そうに見えるみたいで、湯原さんからいつも『ホントに具合悪いの?』とか『常に顔が出来てるね?』ってからかわれるんです(笑)。」

 ちなみに荒木さん、家の中でくつろぐ「ジャージ」も持っていないそうです。
そんな荒木さんに伺ってみました。
荒木さんにとって、宝石とはー?

「女性にとって宝石って、いくつになっても心が潤うもの。そして自分の歴史を語ってくれるものだと思うんです。残念ながら、私は想い出が詰まった宝石のほとんどを失くしてしまいましたが、心の中で宝石が想い出をちゃんと語ってくれている。これからは歳を重ねていく喜びの中で、どんな宝石が新たな歴史を築いていくのか、楽しみにしたいと思います。」

荒木由美子さん プロフィール

1960年 佐賀県生まれ。
1976年「第1回ホリプロ・タレントスカウトキャラバン」にて「審査員特別賞」を受賞し、芸能界デビュー。
歌手・女優として活躍。1983年、歌手・湯原昌幸さんと結婚し、芸能界を引退。結婚2週間後に倒れた義母を20年にって介護し、自らの体験を綴った著書「覚悟の介護」を、2004年に出版。これを機に芸能界へ復帰し、介護や家族の在り方などをテーマに、全国で講演活動。夫・湯原昌幸さんとの「おしどり夫婦」ぶりも注目され、夫婦での共演も人気を呼んでいる。

(番組ガイド誌「ジュエリー☆GSTV番組表」 2016年12月号掲載)

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