【私の宝石物語】女優・ビーズ作家・秋川リサさん
各界で活躍する有名人の方々が、宝石への想いを紡ぎ出す「私の宝石物語」。
今回は、女優でビーズ作家としても輝きを放つ、秋川リサさんが登場。 トップモデルから女優に転身し、オシャレなファッションリーダーとして、時代を歩んできた秋川さん。その人生を彩ってきた、宝石の魅力に迫ります。
十代でファッションモデルとして、一世を風靡した秋川リサさん。そのオシャレのルーツは、働きに出ていたお母さんの代わりに、秋川さんを育ててくれたお祖母さんにあるといいます。
「祖母がいつも言っていたのは、『女は20歳を越したら、本物を身に付けなさい』っていうこと。祖母は明治生まれで、戦争も二回経験してるんですけど、『宝石っていうのは自分の身を守るもの。本物の宝石を持っていれば、万が一の時に売ることだって出来る。だから本物を身につけなさい。でもそうならない人生を送るのよ』って教わって育ったんです。」
若い頃は新橋の売れっ子芸者で、絵葉書のモデルになる程の美しさだったというお祖母様。20歳になった時、初めての「本物」をプレゼントしてくれたのも、お祖母さんでした。
「祖母が芸者時代に使っていたかんざしがあって、それには本物のパールが2個付いてたんですが、それを指輪に作り変えて、成人式の時にプレゼントしてくれたんです。でもその本物も、何も考えずに付けたら、単なる見えっ張り、単なる趣味の悪い女になっちゃう。本物を付けて、カッコ悪い女には絶対になりたくなかった。マナーやTPOをわきまえ、きちんと本物を身にまとう。多分祖母もそういうことを言いたかったんだと思います。その指輪? 娘が成人式の時に、今度は私から娘に贈りました。」
そしてもう一つ、20歳の時に手に入れた「本物」が、ハート型にカットされたダイヤモンドのリング。
「15歳でモデルデビューして、20歳の頃にはメチャクチャ稼いでたんで(笑)自分でハート型のダイヤの指輪を買って、しばらくして次はイヤリング、その次はネックレスって、自分へのご褒美で、ハートのダイヤシリーズを増やしていったんです。でも今考えると、それもよしあしでね。そこそこのカラット数の大きいものを自分で買っちゃうと、「あ〜持ってるんだね」っていうことになって、誰も買ってくれなくなるのよね(笑)そこは問題だったわ(笑)。」
▲秋川さん所有のハート型のダイヤモンド
▲秋川さんのライフワーク、ビーズ刺繍
の作品
13年前からはビーズ刺繍作家として、全国でビーズワーク教室を開催する秋川さん。
「ビーズ」と「宝石」。どちらもキラキラ輝くものですが、ビーズ作品のアイディアを、宝石から得ることも多いといいます。ティアラ展や宝石展を見に行ったりすると、『すごいキレイ!』とか感動して、トートバッグの図柄にティアラを使わせてもらったり、指輪のデザインをちょっとパクらせてもらったり(笑)だって皆さん、宝石をイメージしたデザイン、喜ぶんですもの。色の組み合わせやデザインを、宝石から学ぶことはよくありますね。それに宝石展で見る『〇〇家に伝わる宝石』って、悲しいドラマがあったりするけど、それも含めて魅力的。宝石ってドラマティックですよね。」
そんな秋川さんが憧れる「宝石のオシャレ」とは—?
「今からもう40年近く前、仕事で香港に行った時のこと。ペニンシュラホテルのロビーで見かけた女性の姿が、今でも脳裏に焼き付いています。ポーターがルイ・ヴィトンのトランク一式を運んできて、その後ろにメイドさんがバックを抱えて続き、そして最後に姿を現したのが、フランス人とおぼしき50代くらいのマダム。白いシャツに黒のタイトスカート。髪はストレートのボブで白髪混じり。化粧っけはないんだけど、ワインレッドの口紅だけ塗られていて。モデルでも女優さんでもなくて、きっとどこかの奥様だったんでしょうけど、この人がとってもキレイで惹きつけられて、ふと指先を見ると、口紅と同じ色のマニキュアが施された指には、大きな角のダイヤ! そして白いシャツの胸元には、これまた大きなパールのネックレス! それを見た時に、『ああ私はこういう人になりたい!』と思ったんですけど、未だになれてないですね(笑) 何でもないシンプルな服装だけど、そこにさらっと宝石を付けて。きっとものすごいお高い宝石だと思うけど、そのシンプルな服が宝石に負けてないの!ジャラジャラ色んなものを付けるんじゃなくて、そんな風にさらっと。それが理想ですね。」
祖母から、そして異国の女性から学んだ「宝石のたしなみ」。
「日本は残念ながら若い方がいいというか、若者文化がもてはやされがちだけど、大人だからこそ着られるもの、身に付けられるもの。この年齢だからこそ、より素敵に映るっていうものが、確実にあると思うの。宝石のオシャレも、そんな風に楽しんでいけるといいですね。」
ジュエリー★一問一答
- 一番大切にしている宝石は?
- 20歳の時に自分で買った、ハート型のダイヤモンドリング。
- いつも身に付けている宝石は?
- ハートのダイヤのリング。一度はめると、お風呂でも何でもずっーと付けっぱなしで、もう一年くらい外してません。糠床かき混ぜる時もね(笑)
- 男性からのプレゼントは?
- ハートのダイヤリングに重ね付けしている、周りにぐるっとダイヤが付いたリング。結婚していた時に相手の方からいただいた「結婚指輪」で、離婚した際にお返しすべきだったかもしれないけど、ものに罪はないってことで(笑)
- 自分を宝石に例えると?
- ダイヤモンドと、誕生石のエメラルド。なぜかダイヤモンドは、ある日突然よく失くすんだけど、ダイヤが私の身代わり。「厄落とし」だと思って、あまり嘆かないようにしてます(笑)
秋川リサさん プロフィール
1952年東京生まれ。
アメリカ人の父と、日本人の母をもつハーフで、15歳でモデルデビュー。抜群のプロポーションと愛らしい笑顔で、一世を風靡する。女優、コメンテーター、近年はビーズ作家としても活躍中。 認知症となった実母の介護生活を綴ったエッセイ「母の日記」を出版。話題を集めている。
(番組ガイド誌「ジュエリー☆GSTV番組表」 2015年3月号掲載)