【私の宝石物語】ジャズ・ヴァイオリニスト 寺井尚子さん
各界で活躍する有名人の方々が、宝石への想いを紡ぎ出す「私の宝石物語」。
今回の語り手は、ジャズ・ヴァイオリン界の女王、寺井尚子さん。
トレードマークの黒を身に着け、ハイヒール姿できりりとステージに立つ寺井さんの、こだわりのジュエリー観に迫ります。
寺井さんがプロデビューした28年前、ヴァイオリニストといえばクラシックが専門で、ステージ衣装も「デコルテを出したロングドレス」が主流。そんなヴァイオリン界に「ジャズ」という新風を吹き込んだ寺井さんは、「切れ味ある」音楽性を表現するために、ヴィジュアル面でも独自のスタイルを追求し、ロングドレスではない、足を出した黒の衣装に、黒の9cmハイヒール。そして耳元には、煌めくダイヤモンドのピアス、という、シンプルな「寺井スタイル」を完成させました。
「『黒』は私のテーマカラーで、もう『制服』みたいなものですね。『黒』を着ると、気持ちが凛とするんです。ステージでヴァイオリンを弾く時は勿論、普段の洋服も全部『黒』! 犬の散歩に行く時すら、全身『黒』で出かけてます(笑)。」
そんな寺井さんがたどり着いたジュエリー。それは黒の出で立ちの耳元を、美しく煌めかせる、ダイヤモンドのピアス。
「ヴァイオリンを弾くので、ネックレスや指輪は着けられないんです。ブレスレットは着けていた時期もあったんですけど、激しく動いたら、客席に飛んでいっちゃって(笑)。何年か前『愛知万博』のステージで、ダイヤのブレスレットを着けて演奏したことがあったんですけど、それも演奏中に客席に飛んでいってしまって。後から探してもらったけど、床がスノコみたいになっていて、見つからなくて。それからステージでブレスレットを着けるのは、やめましたね(笑)。」
▲今一番お気に入りのダイヤのピアス
▲CDジャケットで使用した
私物のダイヤのピアス
▲ネックレス&ブレスレットを
ジョイントした手作りベルト
▲「キラキラベルト」のコレクション
ネックレスや指輪を身に着けられない分、耳元のオシャレを楽しんでいるという、寺井さん。ステージ衣装のジュエリーは、本物でなく見映えの良いアクセサリーを使うアーティストも多い中、寺井さんの場合、全て本物のダイヤモンドで、しかもステージだけでなく、プライベートでも愛用しているといいます。
「ピアスはステージ用ではなく、普段と兼用です。私はコンサートの時はスタイリストさんやメイクさんを付けず、自宅で自分でメイクして出かけるんですが、その時にピアスも着けて、そこでスイッチが入るっていうんでしょうかね。ピアスを着けると、準備完了。いざ出陣って感じです(笑)。」
そんな寺井さんの「愛用ピアス」の変遷が分かるのが、寺井さんがこれまでにリリースしてきたCDアルバムのジャケット写真。そこにはジャケット撮影のために、寺井さんが自らセレクトしてきたピアスの、煌めきの変遷を見ることが出来ます。
「毎回アルバムのジャケット写真のジュエリーは、自分で選んでいます。スタイリストさんも一応用意してくれるんですが、私も自分で持っているアイテムを持参して、そこから選ぶことが多いですね。今年3月にリリースした最新アルバム『Twilight』では、撮影の前日デパートに行って、自分で3つ買ってきたものの中から、いつものダイヤとは違う地金タイプを選びました。長く下がるタイプなので、ヴァイオリンを弾く時には着けられないんですが、クールな感じがとても気に入っています。」
「黒の衣装+黒のハイヒール+ダイヤのピアス」という、シンプルな演奏スタイルを確立した寺井さんですが、ステージ上での照明の効果を考え、こんな工夫をしていたこともあったそうです。
「最近はあまりしていないんですが、ベルトをキラキラさせていた時期もありました! 黒のシンプルなワンピースに、キラキラのベルトをすると、照明があたった時に綺麗なんです。演奏中、ネックレスや指輪などのジュエリーが出来ないとなると、耳元のダイヤとベルトのキラキラが、演出的な効果を狙った定番になりましたね。かなりの数のベルトを持ってますが、中には、ブランドもののネックレスとブレスレットのセットを自分でジョイントした、手作りのベルトもありますよ(笑)。」
しなやかな感性と情熱的な演奏。そしてクールビューティーなビジュアルで、多くのファンを魅了し続ける、No.1ジャズ・ヴァイオリニスト、寺井さん。「今、自分が表現したいことに忠実」がモットーで、今の時代の香りを感じながら音楽と向き合う日々。それはジュエリーにおいても同様で、「今の自分にしっくりくるかどうか」が、永遠のテーマのようです。
「シンプルにシンプルにをテーマに削ぎおとして、ダイヤのピアスだけが残りました。この先、どう変わっていくか分かりませんが、ダイヤのピアスは私にとって、一生もののジュエリーだと思います。」
▼最新アルバム「Twilight」のジャケット写真で着用の地金ピアス
寺井尚子さん プロフィール
神奈川県生まれ。
4歳からヴァイオリンを始め、1988年、ジャズ・ヴァイオリニストとしてプロデビュー。独自性あふれる豊かな表現力と、情熱的な演奏スタイルが注目を集め、人気・実力共にNo.1を誇る、ジャズ・ヴァイオリンの第一人者となる。セルフプロデュースした最新アルバム「Twilight」が好評発売中。ライブ活動も精力的に行い、9/3東京国際フォーラム、9/8愛知・電気文化会館、9/11岩手県民会館でコンサートが予定されている。
(番組ガイド誌「ジュエリー☆GSTV番組表」 2016年9月号掲載)