【私の宝石物語】女優・歌手 木の実ナナさん

 各界で活躍する有名人の方々が、宝石への想いを紡ぎ出す「私の宝石物語」。
今回お話を伺ったのは、日本を代表するミュージカル女優・木の実ナナさん。
1962年に芸能界入りし、今年で実に、デビュー55周年を迎えるという女優人生は、果たしてどんなジュエリーで彩られてきたのでしょうか?

木の実ナナさん

 太陽のように明るい笑顔と、日本のショービジネス界をリードする歌と踊りで、多くの観客を魅了してきた木の実さん。

 その姿は歳を重ねてさらに輝きを放ち、2001年には、日本ジュエリー協会から「最も輝き」「最もジュエリーが似合い」「今後もジュエリーを身に着けて欲しい」著名人に贈られる、ジュエリーベストドレッサー賞【50代部門】を受賞。注目を集めました。

「何がスゴいって、この時いただいた副賞が豪華で! 黒蝶真珠のブローチやシェルカメオとパールのネックレス、ダイヤモンドの指輪など、全部で10点以上あったんじゃないかしら。その中には、私の名前『ナナ』にちなんで『シャイニング7』と名付けられた、豪華なトパーズのネックレスもありました。ジュエリーだけじゃなくて、ルビーの砂時計もあってね。ひっくり返すと、ルビーがキラキラ落ちてきてとってもキレイ! 枕元に置いてあるんだけど、見てると引き込まれて眠れなくなっちゃうの(笑)。個性的なデザインのルビーとダイヤの指輪も、気に入ってよく着けています。沢山いただいたので、お友達にも『幸せ』をお裾分けしたら、みんな喜んでくれて。ここだけの話ですが、某大物女優さんにも何点かプレゼントしました(笑)。」

 東京の下町・向島の出身。父はトランペット奏者、母はショーダンサーという家庭に生まれ育った木の実さん。

「終戦のあくる年に生まれて、両親は結婚指輪もないような人達で、宝石とは縁のない生活だったけど、母はすごく『手』が綺麗な人でね。『手は顔よりものをいうのよ』って言われて育ったんです。『鞠子(まりこ・木の実さんの本名)、あのお金持ちを見てごらん。どんなに宝石を着けてたって、手がシワシワだろ? それに比べてママの手は、宝石はないけどツルツルだろ?』って(笑)。そんな母の教えで、子供の頃から手はケアしてましたね。といっても母の真似をして、お湯は使わず冷たい水で洗って、最後に氷水の中に手を突っ込むだけ。あとは寝る時、手袋して寝なさいって言われて、手袋はめて寝るんだけど、朝起きたらいつもなかったわね(笑)。でもこの世界に入って、そのお手入れが役に立ちました。本来私の年齢だったら、もっとシワシワになっていると思うんだけど、今でも『綺麗』って言っていただけるのは、ママのお陰ですね。手が綺麗だと、指輪も映えるし!天国のママ、ありがとうー!」

▲ジュエリーベストドレッサー賞で
贈られた指輪

▲ジュエリーベストドレッサー賞の副賞
トパーズで出来た「シャイニング7」

▲初めて自分で買ったキャッツアイ

▲お気に入りのジュエリー
中段一番右がタイで買ったスタールビー

 お母様譲りの「美しい手」を誇りに歩んできた、55年の女優人生。その指には、どんなジュエリーの輝きがあったのでしょうか?

「初めて自分で買ったジュエリーは、渡辺プロダクションに所属していた20代の前半。当時はパーティーもよくあったし、お正月に着物を着てお客様をお迎えする時も、みんなスゴい指輪をしてるんですよ。でも私だけ指輪がなくて。それで初めて宝石屋さんに行って、キャッツアイを買ったんです。綺麗な十字が出る石が気に入って、周りにダイヤを付けてゴージャスにしてもらいました。まだ若かったから、大きなお買い物でしたけど、キャッツアイは着物でもイブニングドレスでも合うので重宝しています。」

 そしてもう一つ、大切なジュエリーがあるといいます。

「30年くらい前にタイで買った、スタールビー。友達が新婚旅行でタイに行く時に、『ナナ、一緒に行こうよ!』って誘われて、『人のハネムーンの邪魔したくない!』って断ったんですけど、結局一緒に行くことになって(笑)。その彼女が『日本で買ったら10倍はするわよ!』というので(笑)、誕生石のスタールビーを買ったんです。石だけ買ってきたので、日本の宝石屋さんで指輪にしてもらいました。このスタールビーも綺麗に十字が出るんです。赤系のドレスの時に、よく着けていますね。」

 木の実さんを彩る、キャッツアイとスタールビー。その着け方にも、ナナさん流のこだわりがあるそうです。

「まず手は清潔にして、爪も伸ばさず。ベージュのネイルをして、キャッツアイを一つだけ着けるの。ジュエリーはこれだけ。でもドレスにキャッツアイ一つでも、すっごく映えるの! よく高そうな指輪を沢山してる人をお見受けしますけど、そういう人って大体洋服と指輪が合ってない。宝石って『高いもの持ってるのよ』って、見せびらかすものじゃないと思うんです。」

 歌って踊れる女優として、今も舞台に立ち続ける木の実さん。最近はやりの『180度開脚』も朝飯前だそうですが、変わらぬ輝きの秘訣はどこにあるのでしょうか?

「人生はいつだって『旬』だと思うの。そのための秘訣は、周囲から『キレイだね』って言ってもらうこと。そうすると『頑張ろう』っていう気になれるんです。だから舞台に出る前はみんなに『ナナちゃん、キレイ?』って聞いて、『キレイ!』って確認してから、舞台に臨んでます(笑)。」

 故・細川俊之さんと二人で演じた伝説の舞台「ショーガール」で、ミュージカル女優としての地位を確立させた木の実さんですが、その舞台が始まった当初、初めて木の実さんを見た評論家が、こう評したそうです。
「ダイヤモンドは、ダイヤモンドじゃないと磨けない。」

 一流の演出家やプロデューサーとの出会いによって磨きをかけられ、見事にダイヤモンドとして輝きを放った木の実さん。
そんな木の実さんにとって、ジュエリーとは…?

「私にとってジュエリーとは、周りの人が楽しんでくれること! 私が明るい色のジュエリーを着けることで、一緒にいる人が楽しい気分になってくれるのが一番ですね。」

木の実ナナさん プロフィール

1946年東京生まれ。
1962年、芸能界デビュー。1974年から始まった細川俊之との二人芝居「ショーガール」は、15年もの間ロングラン公演を続けた代表作。歌手としても活躍し、五木ひろしとデュエットした「居酒屋」は大ヒットを記録。デビュー55周年を記念した木の実ナナ コンサート「SHOW GIRL@HOME(ショーガール・アット・ホーム)リターンズ」が、自身のホームグラウンドである、東京・下北沢で開催予定。2017年1月13日(金)~15日(日)、下北沢の本多劇場にて行われる。

(番組ガイド誌「ジュエリー☆GSTV番組表」 2017年1月号掲載)

私の宝石物語へ戻る